「運賃値上げ」と「配達の同時性」。もぅマヂ無理。。。な物流会社の悲鳴に迫る

「運賃値上げ」と「配達の同時性」。もぅマヂ無理。。。な物流会社の悲鳴に迫る

「もぅマヂ無理」

膨大な仕事量を我が身一つで捌かなければならない。社会人あるあるなのかは不明だが、そんな時つい心の中で呟いてしまう方は多いだろう(決してちょぉ大好きだった彼氏と別れたからではない)。

こんな状況、実は近年の物流業界も例外ではない。

宅配個数増加と人員不足の加速。そんな中、大手物流会社3社は遂に運賃値上げに踏み切った。

「もぅマヂ無理」と嘆かれちゃ手首の心配、、じゃなくて業界の現状を心配をせずにはいられない、そんな物流会社の悲鳴に焦点をあてた。

1、宅配荷物の増加による労働条件の悪化

宅配荷物の増加傾向は国交省が発表したデータから読み取れる。

参照:http://www.mlit.go.jp/common/001252227.pdf

2016年は37億個(対前年度比103.6%)。2017年40億個(対前年度比107.4%)。

2018年42億個(対前年度比105.8%)と結構な増加傾向。

近年はアマゾンを筆頭に送料無料のネット通販を多く利用する方が増えているが、その傾向が分かりやすく反映されている気がする。しかし、運ぶ荷物が多くなると配送員が激務になるのは必須(仕事量が増えると言うこと)。限られた労働時間の中で多大な荷物を運ばなければならない。体力も知恵も要求される。

更に厄介なのは、先ほど触れた送料無料のネット通販の増加だ。送料無料と言う恩恵を我々が受けるその代償として、物流会社は、送料で賄う自身の儲けを削らなければならない。

その流れは、2005年に佐川急便が破格の運賃によりアマゾンの業務を請け負い始めてから加速していった。世間がアマゾンの送料無料の便利さに慣れるほど、各社は「薄利多売の物流」を強いられざるを得なくなる(参照:仁義なき宅配: ヤマトVS佐川VS日本郵便VSアマゾン)。

仕事がどんどん増えるばかりだが、その頑張りが儲けに反映されない。正に労働条件の悪化である。

んじゃ人を多く雇えば良いじゃんって意見もあるが、一筋縄ではない様子だ。

国土交通省が発表している、「トラック運送業の現状等について」という資料から説明しよう(参照:http://www.mlit.go.jp/common/001242557.pdf)。

なんとトラック宅配業者の有効求人倍率は2.68倍。全職種平均の1.36倍に比べるとかなり高い。これは需要がかなり多いことを意味するが、裏を返せば人手不足も甚だしいということを示すデータでもある。

しかも国土交通省自体が、「この有効求人倍率の改善には、全産業と比較して低賃金、高労働時間である労働条件の解決が必要不可欠」と見解を出している。

低賃金、高労働時間だから離職者も増えるだろうし、新たにこの仕事をやりたがらない人が多くなるという構図だ。

ヤマト運輸を例にとった物流会社の現状も後述するが、それも踏まえ労働条件はどんどん悪化しているのだ。

1-1、運賃値上げと荷物量の関係

そんな中、大手物流会社3社「ヤマト運輸」「佐川急便」「日本郵政」相次いで運賃値上げに踏み切ったのは記憶に新しい。

各社の新運賃の適用は以下の日からスタートとしている。

ヤマト運輸:2017年10月1日

佐川急便:2017年11月12日

日本郵便:2018年3月1日

各社の値上げ幅は以下の通り。

  ヤマト運輸 日本郵便 佐川急便
サイズ 改訂運賃 値上げ幅 改訂運賃 値上げ幅 改訂運賃 値上げ幅
60 940円 140円 950円 100円
80 1,140円 140円 1,180円 110円
100 1,360円 160円 1,410円 120円 1,360円 60円
120 1,560円 160円 1,660円 160円
140 1,780円 180円 1,910円 190円 1,780円 230円
160 1,980円 180円 2,120円 190円 1,980円 180円
170 2,480円 230円 2,850円 550円

参照:https://www.shippinno.net/netshop-blog/shukka_hassou/souryoukaitei/

強引な試算だが、ヤマト運輸を例にとって値上げ幅の平均値160円として、ヤマト運輸の2018年の宅急便取扱数18億353万個をかけてみる。160×18億353万=2885億8080万円 値上げにより得られる金額だ。「きつい仕事には相応の対価を」と言うが、正に塵も積もれば山となる、である。

1-2、物流会社の現状(ヤマトを例にとって説明)

値上げによって得られる金額は莫大だし、ヤマト運輸の2019年度の宅急便取扱数は微増見込みとのニュースもある(参照:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43338310U9A400C1916M00/)。

ヤマト2019は明るい話題が揃った様に見える。が、これまでの現状はなかなか厳しい。

参考として、ヤマト運輸の過去5年の営業利益、経常利益をまとめた。

  営業利益(百万円) 前年比 純利益(百万円) 前年比
平成26年3月期 63,096 △4.7 34,776 △1.0
平成27年3月期 68,947 9.3 37,533 7.9
平成28年3月期 68,540 △0.6 39,424 5.0
平成29年3月期 32,131 △44.7 17,429 △51.2
平成30年3月期 35,685 2.3 18,231 1.0

参照:http://www.yamato-hd.co.jp/investors/financials/results/index.html

いや29年3月期の落差が著しい!!!

この年は前述したネット通販の台頭による弊害をもろに食らった形である。薄利の宅配荷物を引き受けすぎ、自社の配送員だけでは対応しきれず、外部の物流業者に一部の宅配業務を外注し、コスト増に繋がった。

また平成28年雇用動向調査を見てみると、運輸業,郵便業の入職超過率は-0.1%である(参照:https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/17-2/dl/kekka_gaiyo-06.pdf)。

ヤマト運輸をはじめ業界全体が人員確保を充分にできなかった事がわかる。そんな中平成29年以降は純利益が大幅に落ち込んでおり、今後、人員確保に正当な費用が割り当てられのか。なんとなく心にしこりが残る。

人員確保が充分でないのに、宅配荷物は増え続ける。かつ配送員が増える望みが薄い。

以上、ヤマト運輸をはじめ各物流会社の現状は人員不足による激務必須の労働環境だと予想ができる。

この現状にトドメをさす問題が再配達問題である。
国交省の再配達率調査によると、2018年10月度の再配達率は15.2%。
(参照:http://www.mlit.go.jp/report/press/re_delivery_1810.html

しかも、再配達が一度で届けられる確率は約80%に留まる。不在が3回以上発生し、二度手間ならぬ三度手間以上となる場合も全体の1%近くあるらしい (参照:仁義なき宅配 )。

激務必須の中、100の配達を完了するのに約118.392の労力を要する。

((15.2×0.8+15.2×2×0.19+15.2×3×0.01)×100 で計算)

10時間労働で完了する仕事が約11.84時間弱(およそ+1時間50分)に延長してしまう。再配達のせいで。実際こんな単純なものでなく、事務処理なども発生し、より超過するだろう。

もうこんなの(›´ω`‹ )ないし\(^o^)/オワタって感じですよね!

2.配達の同時性(再配達の根本的な課題)

物流会社の現状をかいつまんで説明したが、皆様も「もぅマヂ無理。」と感じ取って頂けただろう。

増える荷物と人員不足。これも問題だが、そもそも再配達がなくなったら配送員の仕事、かなり負担が減りそうだ。

ここでふと思う。再配達が生じる根本的な問題って何だろう?

『宅配がなくなる日』(松岡真宏/山手剛人 著)では、「配達の同時性」が根本的な問題と定義しており、かなり芯を喰っているので今回説明したい。

配達の同時性をかいつまんで説明すると以下の通り。

・人の行動が「時間」または「空間(=場所)」(もしくはその両方)の制約を受けている状態が「同時性がある」状態である。

・配送員の「商品の受け渡し」は、宅配業者が商品を買い手の住所に届けるのが原則だ。この場合、買い手が在宅する「時間」や、自宅という「場所」の制約を受ける。

なるほど、確かに宅配って配送員が自宅まで届けてくれるけど、受取人と配送員が顔を合わせないと荷物が受け取れない。荷物を受け取るには、配送員が自宅に来るまで家で待機せねば(つまり時間と空間の制約を受けなければ)ならない。つまり、配達は同時性が発生している事が理解できる。

2-1、受取人の課題

悲しい時ー!平日朝10時に自宅ポストに不在届が入れられている時ー!

いつも◯こからの持ちネタストックにありそう。エ◯タの神様でテロップ付きで披露されてそう。

ピタゴラスイッチ芸人の話はさておき、「平日、朝に荷物届けられても家にいねーよ!」って感覚を持っている方が多数とは思う。

一方で、平日の朝に荷物を届けて欲しいと思う人も一定数は居そうだ。例えば、昼以降に働きに出る人だったり、平日にしか休みがない人。こんな人たちは平日の昼間に届けてくれる方が有難いはずである。

要は「受け取りたい時に荷物を届けて欲しい」という欲求を受取人は必ず誰もが持っていて、そのニーズは人によって異なる。再配達とかなったら不在票片手に配送会社に連絡する手間も発生するし、自身が在宅の時にピンポイントで配達員が来てくれたら有難いのは間違いないのだ。

2-2、配送員の課題

んじゃ逆に配送員はなんでやたら平日の昼に荷物を届けたがるのか。

シンプルな話で、「その配送員はその時間帯に働いているから」これに尽きると思う。

配送員は、勤務時間内に配達作業を終えなければならないノルマが課せられる。

その時間内で届けられるものは滞りなく届けに行く、これは仕事の性なのだ。

しかし、その性が無駄うちになってしまう事が正直多く、同時性の制約を受ける形で配送員の長時間労働に繋がっている。

そんな無駄うちを解消する対応策として、ヤマト運輸は13〜21時に宅配業務を行う「アンカーキャスト」の積極採用を打ち出した(参照:http://www.kuronekoyamato.co.jp/ytc/recruit/career/lp/ac/)。

これは配達時間を変える事で同時性を解消する対応策であるが、、。

配送員は、受取人に対して「配達する時に居てくれたらどんなに有難いか」「その時間帯は不在って事前に分かればどんなに有難いか」と、強い欲求を感じている筈だ。

先述した、昼以降に働きに出る人にも荷物を届けることを考えると、アンカーキャストの積極採用のみでは、欲求に対する根本的な解決には繋がらない。配送員が配達したい時間帯に受取人が在宅であることを知れる、そんな対応策も必要な気がする。

最後に。

今回は、物流会社の悲鳴を紹介し、再配達問題に大きく関わる「配達の同時性」を知って頂いた。

受取人と配送員、お互いの欲求を適切に把握し、再配達問題を解消できるサービスが今後展開されていけば、物流会社の悲鳴はなくなっていき、より質の良い配達事業と発展できる筈である。

大手物流会社3社は配達予定日の事前通知を行うサービスを展開することで、再配達問題の解消に努めている。

またヤマト運輸や佐川急便はウェブ上で配達日時の変更が対応可能であったり、ヤマト運輸や日本郵政は受け取り場所の変更が可能であったりと、各社サービスの充実化を通し、再配達問題に対し具体的な解決策を提示している。より詳細に知りたい方は、本サイトでもフォーカスを当てた記事がある。参照いただければ幸いである)

TODOCUは21時-24時の夜間配達代行サービスの展開や、受取人と配送員の同時性制約の解消に繋がるアプリ開発など、再配達問題のより良い解決に日々取り組んでいる(https://todocu.tokyo/)。今後の動向に注目していただければ幸いである。

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